大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和26(あ)2474 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人対馬郁之進の上告趣意について。

論旨第一点は事実誤認、同第二点は事実誤認を前提とする法令違反、同第三点は

憲法三一条違反を主張するのであるが、その実質は単なる訴訟法違反、同第四点は

量刑不当の各主張に帰するから、論旨はいずれも明らかに刑訴四〇五条に定める上

告の理由にあたらない。そして原判決の是認した第一審判決は「被告人は……痛憤

の場合どうせ死ぬなら今まで被告人を馬鹿にして来たAを殺害して道連れにし、こ

とのついでにA方から金品を強取して酒を飲み存分に好きなことをした上で自殺し

ようと決意して……A方へ赴き……同家板の間へ押入り…:」と判示して、被告人

はAを殺害し同人方から金品を強取する意思で同人方へ侵入したものであることを

認定し、所論のようにAを殺傷して同人に対する怨恨をはらす意思だけで同人方へ

侵入したものであるとは認定していないのであつて、この判示事実の認定は、その

挙示する証拠に照してこれを肯認するに足り、その間反経験則の違法もないから、

論旨第一点の事案誤認の主張は採るをえないし、被告人が犯行当時心神耗弱の状況

にあつたとの論旨第二点の主張が採用できないことは原判決に示すとおりである。

また、本件起訴状には「第一被告人がB、同Aにそれぞれ数回斬りつけて手提金庫

等を強取したが、その際用便に起きてきたCの母Dの顔を拳固で強打し、・で同女

の頭に一撃を加え死に至らしめた」旨記載され、「罪名、罰条」として「第一につ

いては強盗殺人(刑法二四〇条後段)、同未遂(刑法二四三条同二四〇条後段)」

と掲記されているから、起訴状の罪名、罰条が公訴事実の内容と一致しないとか、

強盗殺人、同未遂に該当する事実が起訴状に記載されていないとの論旨第三点の主

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張は採るをえない。さればこれ等の主張を前提とする原判決の非難はあたらない。

なお原判決の是認した第一審判決の量刑は記録を精査しても不当とは認められない

から、本件には刑訴四一一条を適用して原判決を破棄しなければ著しく正義に反す

るものとも思料されない。

被告人の上告趣意について。

論旨前段は、物を盗む目的でした犯行でなく、リユツクサツクはたずさえて行か

なかつたという単なる事実誤認の主張に帰し、同後段は、犯行の動機、犯行時の精

神状態等を縷述し、原審までの被告人の供述は真実に反するものであると主張し、

犯行後の心境を披瀝して、寛大な裁判を求めるという単なる事実誤認、量刑不当の

各主張に帰し、明らかに刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらないし、所論の

ような事実誤認、量刑不当も認められないから、同四一一条を適用すべきものとも

思料されない。

よつて刑訴四〇八条、一八一条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決

する。

昭和二六年一二月二〇日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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